4年生の道徳で子どもたちが学んでいる、素敵なインドの民話を全文紹介させていただきます。

 【花をさかせた水がめの話】

 昔、インドに、水をくみに行く仕事をしている男がいました。水がめを左右のかたにかついで、毎日、川から遠くはなれた高いおかの上にある、ご主人様の家まで運んでいました。

 しかし、家に着くと、左側の水がめは、いつも水が半分にへってしまっていたのです。この左側の水がめにはひびわれがあり、水がぽたぽたと落ちて、こぼれてしまうのでした。男がどんなに急いでおかをかけ上がっても、やはり半分になってしまうのでした。

 そういう日が何日も続きました。ひびわれた水がめは、たまらなくなって、水くみの男に言いました。

 「あなたが苦労して、一生けん命働いているのに、わたしのせいで大事な水がいつも半分になってしまいます。いつもめいわくばかりかけて、申しわけありません。」

 ところが、水くみの男はやさしく、

 「いいんだよ、そんなこと心配しないで。半分でも助かるんだよ。」と言って、そのまま水くみを続けていました。

 それから2年がたったある日のことです。「ハーハー」言いながらおかを登っていく水くみの男のそばで、右側の水がめは水をいっぱいにたたえ、得意げでした。一方、左側の水がめは、申しわけないという気持ちがますますましていくのでした。そして、ついにたえられなくなり、

 「わたしなんていたってしょうがない。いっそのこと、こわしてください。」と、何度もうったえました。

 それでも、水くみの男はだまったまま、いつものようにおかの上まで登っていきました。そして、おかのてっぺんに着いたとたん、二つの水がめを、今登ってきた方向に向けて下ろしました。

 「あれ。」

 二つの水がめは、あまりの美しさに目を見張りました。登ってきたおかから、太陽に照らされてかがやく花の道が、下までずっと続いていたのです。

 「ごらん、道のどっち側に花がさいているかな。」

 ひびわれた水がめは答えました。

 「わたしが通ったほうです。」

 「そうだね。君が通ったほうだけに美しい花がさいているね。君がいなかったら、こんな見事な花はさかなかったんだよ。わたしは初めて水を入れておかの上にたどり着いたときに、君の水が半分になっていて、ひびわれがあることに気付いたんだ。そこで、君のひびわれを役立てようと思って、君が通るところに花の種をまいたんだよ。雨がふらない土地で君がいなかったら、花はけっしてさかなかっただろう。君が毎日、左側に水をあたえてくれたおかげだよ。ご主人様もよろこんでいるんだ。ありがとう。」

 ひびわれた水がめは、もう一度、きらきらとかがやく花の道を見わたしながら、世の中にこんなに美しいものがあるのか、そして、それに自分が少しでも役に立っていたのか、というよろこびでいっぱいになりました。ひびわれがあるから自分なんてだめなんだ、と思いつめていたおろかさに気付き、ひびわれを生かして、見事な花をさかせることができた自分を、大好きに思えるようになったということでした。

 

【授業の様子】

   

 4月の「学校だより」に書かせていただいた、本校の子どもたちに育てた

い、『自己肯定感』そのものです。

 私たち第七小学校教職員も、この物語の『水くみの男』の人に負けないよ

う、精進してまいります。